arakabu-kamenoteのブログ

あちこちガタがきだしたオヤジの日々の記録です。

池島発電所

今月は、3ヶ月に一回の肝細胞癌の検査月であった。
4日に、血液検査の為の採血と、造影剤CTを行っった。その検査結果が、11日の消化器内科の診察時に告げられた。
血液検査の癌マーカーの一つ『CED』の値が上限の5.0を超えて6.0に上がっていたが、CT画像からは、前回確認された昨年9月の手術の影響と思われる肝臓の一部の変色も小さくなっていて、新たな癌の発生も確認されなかった。
今回上限を超えた癌マーカーの前回(12月)の値は3.8で、何らかの兆しである可能性もあるが、
「とりあえず様子を見ましょう」と主治医
ギリギリセーフー、という感じ。
次回の検査が5月の末、チョット不安は残るが、なるようにしかならない。
『まな板の上の鯉』である。

診察の日は、ちょうど『3.11』
10年前のこの日に、なんの前触れもなく旅立つことになった方々のことを思うと、私は幸せものだ。
昨夜はテレビで福島原発の映画があっり、それを見て、もう20年以上昔になる、池島発電所に勤めていた時の事を思い出した。

池島は、長崎県西彼杵半島の沖に浮かぶ炭鉱の島であった。
その炭鉱の微粉炭専焼の自家用発電所に勤務していた。
出力は9500KVAの小さな発電所であるが、発電に用いた蒸気の排熱で海水淡水化装置を運転していた。
淡水化装置は、多段フラッシュ方という方法で一日2650トンの真水を海水から作っていた。
この水が島民(主に炭鉱の社宅の人々)の生活用水であった。

私が炭鉱を去る直前は、池島発電所の3交代の運転班長をしていた。
炭鉱は九州電力から海底ケーブルで送られる電気と自家用発電所の電気を使用して操業していた。

池島発電所は海底ケーブルで九州電力とつながって、電気的用語で言うと並列運転していた。

発電所の運転員は5名で、2名が中操(中央操作室)担当で、残りの3名が
現場巡回にあたっていた。
全員が、全ての作業が出来るように、毎日担当箇所を交代していた。

その運転班が3班あり、交替勤務をしていた。
平常時は、淡水化装置の塩分濃度の僅かな上昇などの微細な異常に対応する位で、ほとんど自動運転であるので、監視のみの日々である。

ただ、悪天候等で、電気的トラブルがあると、5名では、手に余る事も合った。

その最たるものは、全停電である。
九州電力からの電気も止まり、発電所も停止状態になる。
主たる原因は、電力会社側の事故に池島発電所がまきこまれる為に起こる。

電力会社側も、池島発電所側も、お互いの事故が影響しないように早急に検出して、電力連携を遮断する。
その時、池島発電所は、単独運転となり、池島内の全電力を負う事になる。

そのままでは、池島発電所は、発電能力を大幅に超え、過負荷で止まってしまう。
そのため、重要でない箇所を即座に停電させて、発電量と使用量のバランスをとる。
そこまでは、だいたい対応に成功するのだが、今度は使用量が下がりすぎて、発電所の出力を急激に絞り込まなくてはいけない。

その対応に失敗して、発電機が加速しすぎてトリップしたり、加速しないように蒸気を絞りすぎて、ボイラーの蒸気圧が上がり、ボイラー側が安全装置により停止してしまい、発電所が停止。
島中が停電してしまう。

発電所も内部電源喪失状態になるので、早急に九州電力からの受電操作を試みる。
大抵は電力会社からの受電が成功し、その後、発電所を起動する操作に入る。

万が一、九州電力からの受電に失敗した場合は、ディーゼル発電機を運転し、発電所所内電源を確保して、池島発電所を起動する。
発電所の起動は、5名では荷が重いのだが、停電と同時に社宅にいた他班の運転員が、駆けつけてくる。

中央操作室では、重故障のベルや、軽故障のベルが鳴り響き、まるで映画のような状態になるが、皆冷静に対応して事故時の対応に当たっていた。

地震で、思い出されるのは、阪神淡路大震災の時だ。
あの時は、夜勤で、明け方、私には常識から考えられない異常が出た。
『周波数高』である。
簡単に言うと、発電機の回転が速くなったのである。

池島発電所だけの単独運転では有り得ることだが、九州電力と連携運転中は考えられない。
九州電力佐世保制御所に直通回線で問い合わせる。
「九州管内全域周波数高で調査中です」
との返事、受話器を置くと、直ぐに再度電話が
「本州側の異常ので、給電指令所で、本州との連携線を切るかどうか検討中」
とのことであった。

阪神淡路大震災のときは、神戸の大電力消費都市が、壊滅的被害を受け、発電量が使用量を上回り連携している電力会社の発電機全部が加速してしまったのである。
休息室で夜食中だった班員が、
「神戸が大変な事になっている、テレビ見て」と教えに来て、やっと状況が把握できた。

東日本大震災は、大規模発電所の停止が多かったので、逆に残った発電所は過負にになり、周波数低状態になったと思う。(私の想像だが)

池島発電所の勤務では、小説が出来るぐらいいろんな事があった。
忘れないうちに書き留めておきたいが、なかなか思うように行かない。
普通の人には、あまり面白く無い話でもある。