arakabu-kamenoteのブログ

あちこちガタがきだしたオヤジの日々の記録です。

大人のポテサラ

「今日は失敗かもね」と夕食準備中の孝子が言った。
「言い訳が先か」とからかい半分で答えた私。孝子が新作を作る時、言い訳から先に入る事がある。一寸だけ味に不安があるのだろうが、自信も有る。先に言い訳しておけば、結果が何方に成っても何の問題もない。『失敗かも』と先に言っておいて、旨ければ、美味しさ倍増である。その辺、孝子は上手い。

暫くして、対面キッチンのカウンターに、一つずつ料理が出てくる。それをテーブルに並べるのは私の役割である。
最初に、お新香等の小鉢や冷蔵庫に保存してあるタッパが出てくる。それをテーブルの上に置くと、次はちょっと小さめの皿にレタスを下に敷いたポテトサラダらしい物が出てきた。
「これが新作」と聞きながらテーブルに並べる。
NHKでやってた、大人のポテサラよ。もう一品有るからね」と言いながら孝子がさらに乗った本日のメインと思われる皿を置いた。緑色の野菜を肉で巻いた物にソースがかけてある。それをテーブルに並べ終わると、
「ご飯にするビールにする」と孝子が声をかける。
「ビール」と答える。勿論、肝臓に持病持ちの私は、ノンアルコールだ。最近はノンアルコールでも酔った気分になるのが上手くなった。以前は大酒のみで、既に一生分飲んでしまった成れの果ての私である。
私が飲めなくても孝子は、毎晩焼酎やワインで晩酌する。目の前で飲まれても何とも思はない、意思は人一倍強い私である。煙草も一日二箱吸っていたが、59歳の時、
「今日から禁煙」と宣言して、きっぱり止めた。要は『気合い』なのだ。

孝子は酎ハイ、私はノンアルコールビールで乾杯して夕食開始である。
「豚肉にしては、いけるね」と、肉巻きの野菜を口にして一言、本来は牛肉派で普段は豚をバカにしているが、今日はお褒めの言葉である。
私も口にしてみて、確かに淡泊ではあるが、それなりに品があって美味しかった。

問題は『大人のポテサラ』である。確かに美味であるが、『微味』と言った方が良い、複雑な味である。まずくは無いが旨いとも言えない。
「この味が分からないと、子供だね」と孝子は言いつつ、
「もう作らないようにしよう」と一言。
「まずくは無いけど、複雑な味だね。これが大人の味か」と私も相づち。

胃が半分の私は、孝子の半分も食べる事が出来なかったが、それなりに満足なディナーであった。

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