「ただいま」
「おはよう」
なんか変、私が仕事から帰って玄関でのやりとりである。
私が仕事に出る時、孝子は夢の中だったのだ。
かと言って、私が夜勤だったわけではない、私の仕事は夜勤はない。
孝子が朝寝坊なだけの話である。
今日は、訪問先が近くだったので、昼食のため帰宅したのだ。
多分朝は孝子寝てるなと思い、昨日の内に、今日の昼食の依頼をしておいた。
「時間ピッタリね」と孝子
「あたりまえだ、食事に遅れるか」と私
私も食いしん坊だから、仕事の都合に食事を合わせるのではなく、食事に仕事を合わせるタイプである。
ほとんど昼食の準備は出来ていた孝子は、最後の一品にキャベツを切ったものと肉を炒めたものを、調味料と一緒にポリ袋に入れてフリフリ。
順調に振り始めたが、やっぱり孝子、袋の口を半分しか持ってない、開いていた口からキャベツが飛び散った。直ぐに振るのをやめて、袋を持ち直し、どうにか仕上がったが、後片付けが大変であった。
完全に手抜きと思っていた私は、このキャベツの美味なことに感動した。
土鍋で炊きたてのご飯に、このキャベツ最高であった。
孝子も料理の腕を上げたものだ。『好きこそものの上手なれ』とはよく言ったもので、私の上を行く食いしん坊は、自分の食べるものをいかに美味しくするか、努力に努力を重ねている。
南蛮漬けやキムチも食卓に並んでいたのだが、このキャベツの影に隠れてしまった。
私は午後の仕事も有るので、匂いの強いキムチは食べれないのだが、孝子はそこまでの気遣いはしない。
「美味しければいいじゃん」である。