arakabu-kamenoteのブログ

あちこちガタがきだしたオヤジの日々の記録です。

ミクロの決死圏

今回、肝細胞癌の治療中、私に頭の中には色々と想像した映像が写っていた。

私は、今までに膀胱癌の内視鏡による手術、胃癌の開腹手術を受けた。
両方とも、内視鏡を通して癌を見ながら、または開腹して直接肉眼で見て患部を治療(切除)するものであった。

今回は、足に付け根から動脈(血管)にカテーテルを挿入し、血管の中を肝臓の癌細胞に向かって進めていき、患部に到着したら抗癌剤を投入し、カテーテルが進んできた血管に詰め物をして癌細胞の栄養補給ルートを断ち、癌組織を死滅させるもので、今までと違い、癌を内側から治療する。

癌を外側から見ながらの治療と違い、肉眼での直接的確認は出来ないのである。

カテーテルの先端に目が有ったとしても、その目が見るものは血管の内部で癌を見ることは出来ない。そして、その目からは、ここが体の中の何処なのかすら確認出来ない。

医者がX線画像で確認しながら患部へカテーテルの先端を進めていき、目的地にカテーテル先端が到着すると、カテーテルの反対側から抗癌剤を注入したり、血管を塞ぐ塞栓物質を投入したりして治療する。

カテーテルを足の付け根から動脈に挿入する時に、局所麻酔して挿入するが、その時も含め私の頭は覚醒している。頻繁にⅩ線撮影やCT撮影を繰り返して治療を進めていくので、患者が覚醒していないと出来ない治療でもある。
「息を吸って、そこで止めて」との機械音の指示に患者が対応出来ないといけない、いいかえると医者と患者の共同作業なのだ。

今回は、私の内科の担当医と指導医、それともう一人(多分レントゲン検査技師かな)の三人が私の周囲にいた。

その三人の会話が私にも聞こえてくるので、先に書いた治療の進行状況が私にも分かる。しかし私にはX線画像は見えない。ただ、その映像を想像するのみである。

そんな治療の中、私の頭の中で、若い頃観た映画を思い出した。
ミクロの決死圏』と言う映画だ。潜航艇やそれに乗る人間が決まった時間だけミクロ化され、人間の頭の中の血管に入り脳の疾患を治療するというSF映画なのだが、なんだか今回の私の治療に似ている。

カテーテルの先端が、この潜航艇のような物である。
映画では、潜航艇が何処にいるのか、乗っている人は分からないので、患者の頭の周囲からレーダーみたいな物でその場所を測定し、潜航艇の乗組員に教えていたと記憶している。

血管の中を行く潜航艇は赤血球や血小板などの幻想的空間を進んでいくのであるが、私の体内でカテーテルが正にその状態で私の肝臓がんに向かって進んで行っているのである。

そんな事を考え
「私にもX線画像が見えるようにしてくれ」と叫びたくなる思いで治療を受けていた。
私の肝細胞癌は二カ所あり、その二箇所の治療が終わるのに当初の予定の倍の三時間を要した。
先生方の会話が聞こえているので、どこで時間を要したのか、大体想像できたが、ド素人の患者の私にも画像が見えて先生方の会話のお仲間に入れたら、今までに無い経験が出来たのにとチョット残念である。

患者が覚醒下で行われる今回のような治療は、治療進行中も患者の意見や要望を聞けるようにして、医者・患者一帯の治療が出来たら素晴らしいと個人的には思っている。
パニック状態になる患者さんも居ると思うので一概には言えないが?